杉本観音は苔むした階段で有名な、鎌倉でも最も古いお寺です。
以前は階段の脇に大きな木が生えており、階段がいい感じの日陰になっていたのですが、現在非常に日当たりの良い環境になってしまいました。
「なってしまいました」というのはつまり、日照が強くなった結果、苔が衰退してしまったのです。こちらは去年の様子。それでもある程度苔むしているのですが、以前と比べるとやはり寂しいようです。杉本観音の住職はとても苔を大切にされている方で、散水設備を導入したり、庭師さんが繰り返し苔を入れたりと、さまざま試みられたようですが、なかなか定着せず、どうにかならないかということでお話をいただきました。
実は私自身、かつての「苔の階段」を見たことはないのですが、なるべく苔むした姿の階段になってほしいという思いを持ちつつ、一年前から「階段苔むしむしプロジェクト」が始まりました。
プロジェクト、といってもやることは、
・階段に大量に堆積した(導入された)土を少しずつ除く
・水やりのやり方を変える(過剰散水しない)
・極力苔を傷めないよう除草、除ゼニゴケする
そして、
・とにかく苔が自然に生えてくるのを待つ
という感じで、実は待つのがメインです。
苔を生やすため、これまで階段に大量の土が導入されていました。
確かに土が入っていた方が水分は保つので、一見苔に良さそうなのですが、
雨が降ると、あるいは散水をすると土が流れます、流れた土が下流の苔にかかると苔が劣化していきます。
また雑草やゼニゴケ類がとにかく生えやすくなるので、しばらくすると「生やしたい苔」が衰退しやすくなります。土というのはうまく使えば苔の成長にプラスなのですが、こういう場所ではいろいろと工夫が必要になってきます。
これまで比較的日差しに強いスナゴケやハイゴケを何度も導入してきたようですが、風に飛ばされたり、劣化したりで、結局ほとんど定着しなかったようです。これもやはり本来なら土に乗せるだけでなく、苔をうまく固定してあげる必要があるのだと思います。
土+苔を導入という形でも、やり方を改良すればうまくやれる自信はあったのですが、実はこの階段、貴重な鎌倉石でできています。長い歴史の中で階段の鎌倉石が削られた形状は趣深いものです。せっかくの鎌倉石に土を被せてしまう、(そして土が流れてかなのか、あえてそうしたのか、実際は階段というよりもほとんど斜面になっていたりする)というのは流石に勿体無い。また鎌倉石は元来苔が生えやすいものなので、それを極力活かしてあげたい、ということで、時間はかかるでしょうが、土を少しずつ取り除き、一から苔を生やす形で進めよう!という方針で進めることになりました。
正直なところ、この強い日差しがある限り、とても難しいテーマであることは覚悟していました。がしかし、間違ってもかえって悪化させるようなことがあってはなりません。本当に土を剥がした階段から苔が生えてくるのか?ある程度の自信はあるとは言え、相手は気まぐれな苔。もし生えてこなかったら、、
そんな不安も正直なところありましたが、プロジェクトから一年が経ち、土を除いた部分からは徐々に苔が芽吹いてきました。雑草やゼニゴケ類は非常に減り、水分過多で黒ずみがちだった部分も昨年よりも健全に見えます。今年の暑い夏を乗り越え、これからまた順調に勢力を拡大してくれると思います。
全体としてはある程度狙い通りの改善が見られたので、なんとかこの調子で進んでほしいところですが一方、やはり日当たりの特に良い部分は、ある程度苔が出てきているとはいえ、まだまだ殺伐としています。
これから時間をかけてでもなんとかがんばってくれ!と最後は苔のちからを信じることしかできません。
今後、途中経過も報告しますが、数年後にはよいご報告ができるよう、がんばっていきたいと思います。
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